こんにんちは。
アラフォー独女のMOMOです。(プロフィールはこちら)
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村山由佳さんの小説「放蕩記」のご紹介です。
「放蕩記」は村山由佳さんと実母の愛憎を描いた半自伝的小説です。
実母との関係に悩んでいた頃、偶然この小説の存在を知り手にとった一冊です
「放蕩記」を読んだ率直な感想は…
主人公の母親に比べたら、うちの母はまだマシかもしれない…
ちょっと失礼な感想ですね💦
私自身も実母との関係に悩んでいたこともあり、主人公の母親「美紀子」の言動には怒りすら感じました。
と同時に「この母親(美紀子)の毒親ぶりに比べたら、うちの母なんてかわいいもの」と、
当時の私の母に対する苛立ちを、少しだけ収めてくれた本です。☺
いろんな母娘の形を知ることは、共感と安心感をもたらしてくれるだけでなく、
比較対象ができたことで、自分の現状を慰めてくれるのだと気づかされました。
近いがゆえに母娘の関係は複雑です。
実の母親(もしくは娘)との関係に悩んだ経験のある方におススメの一冊です。
村山由佳さんの他の本の紹介はこちら→「風よ あらしよ」
筆者の実母との体験談はこちら→【母親が嫌いな娘の本音】同居する40代娘と70代母の微妙な関係
放蕩記(ほうとうき)
タイトル 「放蕩記」
著 者 村山 由佳(むらやま ゆか)
出 版 社 集英社
発 行 日 2011年11月30日
※こちらの記事は可能な限りネタバレしないように書いています。
作者紹介
村山由佳さんてどんな人⁉
- 1964年生まれ、東京都出身の小説家
- 2度の離婚をへて、現在は軽井沢に在住
- 2003年『星々の舟』で第129回(2003年上半期)直木賞を受賞
- 2009年『ダブル・ファンタジー』で第4回中央公論文芸賞、第16回島清恋愛文学賞、第22回柴田錬三郎賞のトリプル受賞
- 2021年『風よ あらしよ』で第55回吉川英治文学賞受賞
数々の文学賞を受賞されている村山由佳さん
年代とともにその作風がガラリと変わるのも魅力のひとつです
作品紹介
「あんた、また太ったんちゃうか」
顔を合わせるなり、美紀子は言った。
こみあげる苛立ちを、夏帆は深く息を吸いこんで抑えた。
~第一章「棘」より~
一度の離婚経験をもつ38歳の小説家、夏帆。
7歳年下の恋人大介ともに、実家に帰省したシーンから物語は始まります。
母の美紀子は初めて実家に連れていった恋人の大介の前で、
「もうそろそろ中年太りかいな」と言い放ちます。
いつもの母の無神経な言葉にピリピリしながらも、夏帆は苛立ちの飲みこみます。
夏帆は幼い頃から母に刃向かうことができませんでした。
激しい気性をもつ母の美紀子は家庭内のシャーマンであり、絶対に怒らせてはいけない存在だったのです。
2つ下の妹の秋実のように要領よく振る舞えない夏帆。
エキセントリックな母の言動に、いつも真正面から向き合い怯えていました。
「やっぱり夏帆はお母ちゃんの子ォをやぁ」
幼い頃の夏帆は、母・美紀子に褒められると天にものぼる気持ちになりました。
機嫌がいいときの美紀子は夏帆たち姉妹に言葉をつくし、楽しませてくれたのです。
「お母ちゃんの子やない。お父ちゃんの子ォをやぁ」
しかし少しでも機嫌をそこねると、般若のような形相で怒る美紀子。
そんな母を恐れ、夏帆いつも母の機嫌を伺い、決して逆らうことなく自分の気持ちを飲み込むようになります。
「しつけ」というより「調教」に近かった。
何でも自分の思い通りにする母に、決して抵抗できない夏帆は成長するにつれ、
ひそかに母を裏切ることで反抗するようになります
10代後半~20代前半の頃、夏帆は「放蕩」を繰り返します。
性別を問わず多くの人と性的な関係を結ぶことで夏帆は心の穴を埋めようとします。
同時に母がもっとも嫌った「放蕩」は、母へのひそかな反抗でした。
それでも決して埋まらない心の空洞…
しかしあれほど恐れた母・美紀子は認知症の症状をみせはじめ、ゆるやかに夏帆の知っている母ではなくなっていきます。
ボケたからといって母へのわだかまりが、いっきに消えるわけではない。
しかし長いあいだ夏帆の中に蓄積した母への憎しみと嫌悪の感情は、少しずつ形を変えてゆくことになります。
感想
「いつでも自分が主役!」な女性を母に持つ娘の悲劇
この物語の母の美紀子はいつでも自分が主役でないと気がすまない人なのです。
小説家として成功した娘にも嫉妬を隠しません。
「うちもな、女学校時代から、国語では学年で一番やったんよ」
「手紙とか、このお母ちゃんに書かせてみ、上手やでぇ」
娘に対する対抗心をあらわにする美紀子に読んでるこちらも苛立ってきました。
この世に完璧な親なんていないのかもしれませんが、この物語の美紀子のように
「いつでも自分が主役」でないと気が済まなタイプの人間でも人の親にもなれてしまう…
冒頭でも書いたように「放蕩記」は村山由佳さんの半自伝的小説です。
「放蕩記」に描かれた夏帆の幼少時代のエピソードを読むと、胸がグッと締めつけられる感覚になります。
実の親によって幼い子供の心が犠牲になる現実を見せられたようで少し苦しかったです。
私のまわりにもいた「母への反抗から放蕩を繰り返す娘」
「放蕩記」を読んで、腑に落ちたことがありました。
私にも夏帆のような幼なじみの友人がいたからです。
私は長いあいだ友人の若い頃の「放蕩」が理解できませんでした。
人間関係の繋がりを無視し、行き当たりばったりで出会った男性たちと
次から次へと性的な関係をもつ友人を、理解できずにいたのです。
そうえいば彼女の母親もかなり支配的な人だった
彼女はいつも母親の機嫌を伺っていたっけ…
どうしても理解できなかった友人の若い頃の「放蕩」ぶりを、この小説を読んで、
「そうゆうことだったのか!」と納得することができました。
ちなみに私の友人の「放蕩」は年齢とともに徐々に収まり、のちに遅い結婚をしました。
しかし彼女の結婚相手もまた支配的な人で、今も結婚生活を続けています。
「問題のない家族はない」あっても言わないだけ
家族との関係に悩んでいる人は多いです。
しかし濃密すぎる家族間の問題を口にする人は少ないのかもしれません。
以前、私が実の母との確執を書いた記事は多くの人に読まれています。
(記事はこちら→【母親が嫌いな娘の本音】同居する40代娘と70代母の微妙な関係)
「放蕩記」の中で描かれている夏帆の家族の関係や問題も複雑で、
母の美紀子だけが悪者ではないような気がしてきます。
独りで家族の問題を抱えているとき、「どうして自分ばかりが…」と泣きたい気持ちになりますが、
実はどの家族にも問題があり、それは外側からは見えないだけなのかもしれません。
おわりに(小説を読むことで救われることもある)
「放蕩記」を手にとった理由は、この小説が作家自身の半自伝的小説であり、
実の母親との確執がモデルだと知ったからです。
当時、母との関係に問題を抱えていた私は、小説を読むことで救われたかったのだと思います。
そして期待したとおり、私は救われました。それは、
「この母親に比べれば、うちの母はまだマシ」とか
「母親を好きじゃなくてもいいんだ。私だけじゃない」とか。
すこし歪んだ形の救われ方かもしれませんが、誰にも迷惑かけずに救ってもらえたのだからヨシとしています。(*´∀`)
そしてこれこそが小説を読む醍醐味だと思うのです。
読むことで救われたり、共感できたり、ずっと探していたもの出会ったり…
「放蕩記」はそのことを改めて実感できた小説でした。
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