こんにんちは。
アラフォー独女のMOMOです。(プロフィールはこちら)
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今回は2021年11月9日に99歳で亡くなられた尼僧・作家の瀬戸内寂聴さんの「かの子撩乱」をご紹介します。
大正~昭和初期に活躍した岡本かの子の伝記小説です。
「かの子撩乱」は昭和37年(1962)から昭和39年(1964)にかけて「婦人画報」誌に連載されました。
岡本かの子とは?
- 大正、昭和期の小説家、歌人、仏教研究家
- 漫画家岡本一平と結婚し、芸術家岡本太郎を生んだ
- 私生活では夫一平の了解のもと、若い愛人・夫・息子と同居する「奇妙な夫婦生活」を送ったことでも知られる
アラフォー世代の私にとって岡本太郎さんは「太陽の塔」「芸術は爆発だ!」でお馴染み(?)ですが、
その母である岡本かの子さんのことは全く知りませんでした。
「かの子撩乱」を読んだきっかけは作家・林真理子さんのYouTubeチャンネル「マリコ書房」をみて、読まずにはいられなくなりました。😅
え💦家族と住む家で2人の愛人と同居って、どうゆうこと⁉
この動画をみて、凡人の私には理解できない岡本かの子の人生にすぐに興味深々になりました。
そして読み始めると、まるで何かに憑りつかれたように岡本かの子の人生に夢中になりました。
「こんな凄い生き方をした女性がいたんだ…」(驚愕😱)
読後はあまりに奇天烈な岡本かの子の人生に、生気を吸い取られてしまいました💦
こんな凄い女性がいたことに「理解を超えた驚き」しかありません!
この記事はこんな人におすすめ☺
- 本・読書が好きな人
- 大正から昭和初期の文壇に興味がある人
- 価値観を超え、激しく生きた女性の人生に興味がある人
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かの子撩乱(かのこりょうらん)
- タイトル 「かの子撩乱」
- 著 者 瀬戸内 寂聴(せとうち じゃくちょう)
- 出 版 社 講談社文庫
※執筆当時の著者名は瀬戸内晴美です。
作品紹介
数多くの作品を残し、伝記小説にも精力的に取り組んだ瀬戸内寂聴さん(99歳没)が30代後半~40代前半の頃の作品です。
「かの子撩乱」は岡本かの子が享年50歳で永眠してから、約23年後に「婦人画報」で連載が始まりました。
瀬戸内寂聴さんが岡本かの子の伝記小説を書くにあたり、当時生存していた岡本かの子と縁があった人々を入念に取材している様子が伺えます。例えば…
- かの子の妹 きん
- かの子の愛人 新田亀三(作品中では「仁田」)
瀬戸内寂聴(晴美)さんの膨大な取材・研究と作家ならではの観察眼により、岡本かの子の情熱的で奇天烈な人生が生々しく浮かびあがってくる作品です。
岡本かの子は豪商の大貫家の長女として生まれます。
乳母から古典・舞踊・習字の手ほどきを受け、兄・大貫晶川(25歳没)からは異常なまでの愛と文学的影響を受け、裕福に育ちます。
その後のかの子の人生が凄すぎて書ききれないので、ざっくりまとめるとこんなカンジ↓
岡本かの子年表(ざっくり)
- 明治43年(21歳)…兄・晶川の下宿で知り合った岡本一平から熱烈な求婚を受け結婚
- 明治44年(22歳)…長男・太郎誕生。
- 元年(23歳)…兄・晶川急逝。第一歌集「かろきねたみ」刊行
- 大正2年(24歳)…長女豊子誕生(8か月で夭折)夫一平の放蕩により夫婦生活は「魔の時代」を迎える 母アイ死去 神経衰弱のため入院
- 大正3年(25歳)…最初の愛人となる堀切重夫(21歳)と出会う。次男健二郎誕生(6か月で夭折)
- 大正3年(25歳)…夫一平の公認のもと愛人堀切重夫と同居し三角関係に陥る。次男健二郎夭逝
- 大正6年(28歳)…愛人堀切重夫死亡。夫一平とともに宗教に救いを求め、やがて親鸞に傾倒していく(のちに仏教研究家として成功する)
- 大正7年~11年(29~33歳)…第二歌集「愛のなやみ」刊行。仏教研究にも熱心に取り組む。夫一平は人気漫画家として時代の寵児となり家庭は平和を取り戻す。川端康成らと交流を深める
- 大正12年(34歳)…避暑先の宿で芥川龍之介と親交をもつが、関東大震災に遭う。同居していた書生恒松安夫の実家に避難する。入院先の慶応病院の医師新田亀三と出会い恋に落ちる
- 昭和2年(38歳)…芥川龍之介の自殺にショックを受ける。愛人新田亀三と夫一平の公認のもと同居を開始する
- 昭和4~7年(40~43歳)…夫一平・息子太郎・愛人新田亀三・書生恒松安夫とかの子の一家5人でヨーロッパへ渡る
- 昭和8~10年(44~46歳)…「文学界」に金銭的な援助を申し入れる。小説執筆に意欲を燃やすが仏教関係の仕事で人気を博し多忙を極める。夫・愛人・書生の同居する3人の男があらゆる面でかの子をサポートする
- 昭和11~12年(47~48歳)…芥川龍之介をモデルにした第一小説「鶴は病みき」発表。以降「金魚撩乱」「母子叙情」などの小説を次々に発表していく
- 昭和13年(49歳)…引き続き爆発的に創作を発表し文壇での地位を固めていく。年末に作歌のために出掛けた油壺の宿で脳充血で倒れる。宿では夫でも愛人でもない若い男と一緒だったが、かの子が発病すると、どさくさに紛れ男は宿を逃げ出す
- 昭和14年(50歳)…夫一平と愛人新田の献身的な看護を受けるが、入院先の病院でかの子永眠する
かの子の宗教や文学での活躍よりも、斬新すぎる私生活の方が断然気になったので赤字にしました☺
夫と愛人と同居し公私に渡り献身的なサポートを受けながら、最期は別の若い男と外泊中に発病して亡くなる岡本かの子…
なんか凄すぎます💦
ちなみにかの子はメンクイだったようで、夫や愛人はもちろん同性の友人に至るまで美男・美女だったそうです。
感想
- 純粋で童女のようなかの子の個性的すぎる人生に圧倒された
- かの子の強烈なナルシズムとエリート意識が育まれた過程が面白い
- 夫一平の人生もかなりすごい。一平のかの子への包容力とマネジメント能力
- 晩年になって念願だった小説家として花開いたかの子の小説ってどんなの?
純粋で童女のようなかの子の個性的すぎる人生に圧倒された
お嬢様育ちの岡本かの子は、我ままで手のかかる女性だったようです。
一方で激しい熱情と自責の狭間で苦しむ、とても純粋な童女のような小児性を持った女性だったと描かれています。
こんな女性に出会ったことがないので、想像すらできないのですが「かの子撩乱」を読みすすめるうちに、かの子の不思議な魅力の虜になっている自分がいました。
この世には人の理解を超えた魅力をもつ人間がいるのかも…
(出逢ったことないけど)
かの子の強烈なナルシズムとエリート意識が育まれた過程が面白い
裕福な家で育ったかの子は、幼い頃からエリート意識とナルシズムを持っていたようです。
さらに夫岡本一平は若い頃の自らの放蕩生活がかの子の精神を破壊したことを悔い、その後はかの子に献身的な愛を注ぎます。
一平は次第に妻であるかの子を神格化していき、かの子を菩薩のように崇拝します。
幼少期から女王様のように育てられた少女が大人になり、やがて夫から神格化されてゆく。
そんな女性が身近にいたら鼻持ちならない女として堪らなかったかもしれませんが、この小説で描かれているかの子はどこか憎めない魅力があります。
(実際に当時の女流作家の中でかの子はたびたび嘲笑の的になり、酷評する人も少なくなかったようです)
夫一平の人生もかなりすごい。一平のかの子への包容力とマネジメント能力
「かの子撩乱」をよみ終えた率直な感想のひとつに…
かの子の人生も凄いけど、夫岡本一平の人生も凄すぎる!
かの子への献身がハンパじゃない💦
自身の放蕩生活でかの子に苦労を掛けたことを悔いた一平は、その後はかの子優先の生活を送ります。
妻の愛人との同居も一平から提案します。
なんなら妻の愛人と協力して、妻かの子を小説家として成功させるためにものすごいマネジメント能力を発揮します。
岡本一平自身も一世を風靡した超人気漫画家でありながら、かの子のために自分は陰に隠れます。
かの子の死後は人前でも憚らずに号泣する一平。
かの子の死の悲しみに暮れながらも、一平はかの子の遺作の発表に取り組みます。
…の割には、一平はかの子の死から2年後には53歳で全く違うタイプの女性八重子と結婚し、ちゃっかり子供を3人もうけています
人の人生って最後までどうなるか分からないものですね😅
晩年になって念願だった小説家として花開いたかの子の小説ってどんなの?
ここまで岡本かの子の奇天烈な私生活ばかり気になって仕方がなかった私ですが、
かの子が晩年、情熱を注いだ小説をいくつか読んでみました。
「鮨」「金魚撩乱」「雛妓」「家霊」「老妓抄」
どの作品も若い頃に読んでいたら理解できなかったかもしれません。
しかし40代の今読んだからこそ分かる、岡本かの子の小説の面白さがありました。
とくに「雛妓」の“奥様のかの子”は岡本かの子自身が投影されているようで、かの子の繊細さと情味溢れる人柄が伝わってきます。
なぜ男たちがあれほどかの子を崇拝したのか、ちょっとだけ理解できた気がしました!
おわりに
「100年前の日本に、こんな女性が生きていたのか😲」
あまりに強烈な岡本かの子の人生に、読後はかるい脱力感に襲われた私…
それはまるで「かの子ロス」状態。
かの子の愛人だった新田亀三は晩年、瀬戸内寂聴にこう語ったそうです。
「かの子と暮らしたあの頃だけは本当に、人生に命がけで真剣な生活をしました」
没後何十年もたって、かつての愛人にこう言わせしめる岡本かの子という女性。
常識と理解を超え、激しい人生を生き抜いたもの凄い女性の人生を垣間見てしまい、
心地よいショックを受けている今日この頃です。😅
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