本の感想「ミシンと金魚」現役ケアマネジャーの永井みみさんの小説

本のこと

こんにんちは。

アラフォー独女のMOMOです。(プロフィールはこちら)

* * * * *

今回は永井みみさんの小説「ミシンと金魚」のご紹介です。

現役でケアマネジャーをされている、著者の永井みみさんは

ミシンと金魚第45回すばる文学賞受賞を受賞されています。

主人公は認知症を患う“あたし”ことカケイさん

彼女の語り口調で物語は展開します。

ミシンと金魚を読んだ率直な感想は…

最初は「おばあちゃんの語り口調、ちょっと読みにくいかも⁉」

だけど途中からグイグイ引き込まれ、

気づいたら得体のしれない感慨に包まれながら…

最後は「読んでよかった…」としみじみ天を仰いでいる自分がいる。

主人公のカケイさんの「独白」による、今までに読んだことがない衝撃的な小説でした!

この記事はこんな人におすすめ です♪

  • 本・読書が好きな人
  • 認知症を患っている方の目線を理解したいと思う人
  • 将来の(両親などの)介護に対して心の準備をしておきたい人

ミシンと金魚(みしんときんぎょ)

タイトル ミシンと金魚(第45回すばる文学賞受賞)
著  者  永井 みみ(ながい みみ)
出 版 社  集英社
発 行 日  2022年2月10日

※こちらの記事は可能な限りネタバレしないように書いています。

著者紹介

永井みみさんてどんな人⁉

  • 1965年神奈川生まれ。千葉県在住のケアマネジャー
  • 過去にヘルパーとして働いた経験がある
  • 現役でケアマネージャーとして働きながら執筆したミシンと金魚で第45回すばる文学賞を受賞

「本当は作家になりたかった」

という書き出しから始まる、永井みみさんの受賞のことばは印象的です。

「コロナで死にかけたときは、作家として死にたかった、と心底悔やんだ。

でも、まさか、ほんとうになろうとは。

これからは、ほんとうの、作家になりたい。」

最後はこんな言葉でしめくくられています。

「すばる」2021年11月号より

作品紹介

「カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」

ある日、ヘルパーのみっちゃんから尋ねられた“あたし”は、絡まりあう記憶の中から、その来し方を語り始める。

母が自分を産んですぐに死んだこと、継母から薪で殴られ続けたこと、犬の大ちゃんが親代わりだったこと、亭主が子どもを置いて蒸発したこと。

やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が膨らみだして……

この世に生まれ落ちて、いつの日か死を迎え、この世を去る。

誰もが辿るその道を、圧倒的な才能で描き出す号泣必至の物語です。

集英社文芸ステーションHPより

著者の前職のヘルパーとしての経験からきているという『ミシンと金魚』のアイデア。

モデルは1人ではなく、著者がヘルパーとして働いていたときに出会った利用者の発言を集約したもの

と、ケアマネジメントオンラインのインタビューの中で永井みみさんがお話されています。

感想

「認知症のお年よりの目線て、こんなカンジなのか!」という率直な驚き

“あたし”ことカケイさんの語り口調で展開する物語。

認知症を患うカケイさんの混沌とした世界曖昧な記憶

カケイさんの目線そのままで文章になっています。

介護施設で働くヘルパーさんをまとめて「みっちゃん」とよび、

ご家族様対応の日に家にやってくる、がさつな嫁に頭をはたかれたり、

「漁師なのに米山です。」の米山のじーさんに好意を抱いたり…。

認知症を患って、物忘れがひどくなっていたとしても、

その時々で触れ合う人々の行動を観察し、心情を想像しているカケイさんの姿に

「認知症になると感情も少なくなるなんて大間違いだ」と気づかされました。

リアルに描かれる介護の現場。介護する未来と介護される未来を考える

現役のケアマネジャーでヘルパーの経験がある著者の永井みみさん。

ミシンと金魚」では介護のリアルな現場が描かれています。

ヘルパーのひとり「みっちゃん」が、カケイさんに処方する薬を巡って

女医と繰り広げる静かなバトルには、なんとも言えない現実を感じました。

私自身、病院で若い医者の機械的でそっけない態度に呆れた経験があるので、この場面は余計にしみました。😓

下のお世話や、老人の性などについても描かれている本作。

きっと誰もが一度は将来の介護について考えたことがあるでしょう。

認知症を患う主人公の目線で描かれている本作を読んで、

「将来、親の介護をするときがきたら、この本をもう一度読みたいな」と思いました。

そして同時に「将来、自分も介護をされる側になるかもしれないんだ…」という

ある意味、当たり前で強烈な事実を認識することができました。

「因果応報」とか「因果はめぐる」って一体なんだろう?

ミシンと金魚」を読んで、もうひとつ印象的だったのが、

カケイさんが口にする「因果応報」とか「因果はめぐる」という言葉です。

若い頃、年寄りを厄介者扱いし、自分だけは年をとらないと思っていたのに

そのときの因果応報で、いつのまにか自分も正真正銘の年寄りになっちゃった。

と、カケイさんは言います。

カケイさんのまま母をインバイ呼ばわりしていた広瀬のばーさんは

因果はめぐるで自分もインバイになっちゃった。

と、カケイさんは言います。

善い行いも悪い行いも、いずれ自分に反ってくるという「因果応報」という言葉が

人生の終末期を生きるカケイさんの口から何度も語られることで

「今をどんな風に生きるか」が、人生の後半になって自分に反ってくるのかも…

と、改めて考えさせられました。同時に

「自分で自分を嫌いになるような生き方だけはしたくない」

と、心の底から思いました。

おわりに

決して軽くはない本でした。

いえ、正直いって40代の私にはちょっと重たい本でした。

だけど、こんなにも「読んで良かった」と思える本はそうそうありません。

この本は年上の友人にすすめられて読んだのですが、

この本と出会わせてくれたことに感謝しています。

人との出会いと同じで、良い本に出会ることは、

人生を豊かにしてくれると思う今日この頃です。

ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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