本の感想「君が手にするはずだった黄金について」小川哲さんの小説 本屋さん大賞ノミネート

本のこと

こんにんちは。

40代独女のMOMOです。(プロフィールはこちら)

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小川哲さんの小説「君が手にするはずだった黄金について」のご紹介です。

著者の作家・小川哲さん自身が主人公の小説です。

「君が手にするはずだった黄金について」は2024年本屋大賞にノミネートされている作品です

大賞発表は4月10日(予定)です!

6つの短編から構成されている本書。

タイトルの「君が手にするはずだった黄金について」もその中のひとつで、黄金が「才能」のメタファーとなっているようです。

正直、最初の「プロローグ」を読むのに苦戦し、最後まで読みとおせるか不安を感じました。

が、「これはエッセイなのか?小説なのか?」という線引きができない状態がなぜか心地よく、

結果的には最後までワクワクしながら読みました。

本屋大賞にノミネートされている「君が手にするはずだった黄金について」のご紹介と感想です。

君が手にするはずだった黄金について

タイトル 「君が手にするはずだった黄金について」
著  者  小川 哲(おがわ さとし)
出 版 社  新潮社
発 行 日  2023年10月20日

※こちらの記事は可能な限りネタバレしないように書いています。

作者紹介

小川 哲(おがわ さとし)さんてどんな人⁉

  • 1986年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学
  • 2015年、「ユートロニカのこちら側」で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー
  • 2017年刊行の『ゲームの王国』で第31回山本周五郎賞、第38回日本SF大賞を受賞
  • 2022年刊行の『地図と拳』で第13回山田風太郎賞、第168回直木三十五賞を受賞

新潮社「君が手にするはずだった黄金について」特設サイトより

作品紹介

「君が手にするはずだった黄金について」は本好きの大学院生「小川哲」が、小説家になり、

山本周五郎賞にノミネートされるまでの過程を描いた6篇の小説で構成されています。

誰もがもつ「承認欲求」や「記憶の不確かさ」をベースに、さまざまなキャラクターが登場します

プロローグ

本好き大学院性の小川の就活と恋模様を描いた作品

「あなたの人生を円グラフで表現してください」

エントリーシートの問いに答えを出せなかった小川が、

のちに小説家になる序章となる物語

三月十日

震災から三年後の三月十一日の夜、居酒屋で四人の高校の同級生と酒を飲む小川哲

震災当日の三月十一日に何をしていたか?について語り合ったあと、小川は思いつきで口にする。

「三月十日って何をしてたのかな」

三月十一日の出来事を忘れている人は少ないが、同じだけ生きたはずの三月十日の出来事を覚えているいる人は少ない。

三月十日に何をしていたかを辿りながら、記憶と真実のあいまいさを描いた作品

小説家の鏡

「妻が青山の占い師に唆されている」

高校の同級生、西崎から相談を持ちかけられた小川は、

青山のマンションの一室で占い師と向き合いオーラリーディングをうける。

目的は占い師のインチキを暴き、西崎の妻の目を覚まさせるため。

が、そこで小川は予想外の体験をする…

君が手にするはずだった黄金について

価値観が違う人間。

まっさきに思い出すのが高校の同級生だった片桐だ。

「初めて話した瞬間からずっと僕は片桐を軽蔑していたけれど、べつに嫌いなわけではなかった。」

ひょんなことから高校卒業から疎遠だった片桐とスーパー銭湯へ行くことになった小川。

のちに片桐は80億円を動かす金融トレーダーとしてSNSで注目されるようになる。

が、その虚像は暴かれもろくも崩れ去る。

片桐は一体何を欲していたのか?

才能という黄金を掴みたかった。たとえ偽物でもみなに認めてもらいたかった。

本書のタイトルでもあり、だれもが持つ「承認欲求」を掘りさげた作品。

偽物

偽のロレックスデイトナを巻く漫画家、ババリュージ。

正月の新橋の個室居酒屋で小川とババリュージは初めて出会う。

小川は人の良さそうな控え目な態度のババリュージに好印象を抱くも、

同席した同級生の轟木のババリュージへの印象はサイアクだった。

理由は「デイトナの偽物を巻いていたから」

漫画家としてのババリュージではなく、一人の人間としてのババリュージに興味をもった小川は、

SNSを使ってババリュージの情報を集め始める…

「本物と偽物」の不確かさを描いた作品。

受賞エッセイ

2018年、31才の小川は山本周五郎賞の最終候補なったという電話をうける。

小説家としてデビューしてから2年半くらい経ったころのことだ。

不正に利用されたクレジットカードの後始末

文学賞の最終候補に残った報せ

構想中の短編小説の主人公エディ

同じタイムラインで3つの要素が交錯しがら、

「小説家とは何か?」という問いを導きだそうとする小川だが…

感想

一抹の不安が「おもしろい」に変わって、単純に嬉しい

「ヤバい…この本、最後まで読める気がしない」

本書の「プロローグ」を読んだとき、そんな一抹の不安を感じました。

主人公の小川とガールフレンドの美梨の会話が哲学的というか、難解すぎて凡人の私の頭に全然入ってこなかったのです。

しかし諦めることなく読み進め、「三月十日」まで辿りつくと、

氷がいっきに溶けていくかのように“難解さ”が消えていきました。

とくに「小説家の鏡」「君が手にするはずだった黄金について」「偽物」のくだりは、

おもしろすぎて、読んでいてワクワクしていました。

一抹の不安が良い意味で裏切られ、「なんか凄くおもしろい」に変わって単純に嬉しかった

そんな感想あるのか⁉

と、書いてて自分でも思うのですが、やはりそれが読後のもっとも強い印象だったので書いた次第です。

主人公「小川」の人間考察がおもしろい

「なんか凄くおもしろい」と感じた理由を考えてみると、

やはり主人公「小川」の人間考察にあると思います。

普通の人が引っかからないことが気になり、考え込んでしまう「小川」の想像力と人間考察が、

「なるほど、小説家ってこんな風に物事を考えるんだ」

と、他人の思考を疑似体験できたような気持ちになるのです。

たとえば「君が手にするはずだった黄金について」で登場する片桐だったり、

「偽物」で登場するババリュージだったり、「小川」にとって理解不能な言動をとる人間の、

行動原理や思考について考えをめぐらせ、自分なりの答えを導きだすまでの過程が、

「なんか読んでてワクワク」のだと思います。個人的に。

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おわりに(作家と初めて出会うとき)

今回ご紹介した「君が手にするはずだった黄金について」を読むまで、

小川哲さんの本を読んだことがなく、存在すら存知上げませんでした。

次はどの本を読もうかと迷うとき、馴染みのある特定の作家の作品から選んでしまう…

なぜか読書においては保守的になってしまいます。

ですが、自分がそれまで知らない作家さんの作品と初めて出会い、

それが「当たり」だったとき、目の前に新しい道ができたような気がするのです。

そんな出会いが小気味よく、ときどきは意識的に新しい出会いを求めるようにしています。

今回ご紹介した本も、そんな出会いのひとつとなり喜んでいます。(^^♪

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